目覚めると、部屋中に淡い光が満ちていた。薄雲を纏(まと)った月が、窓越しに見える。片雲の風に誘われた旅路の芭蕉も、この月を観(み)たのであろう。
私は、決まった時間に覚醒し机に向かう。
昨年より、建築の勉強を始めた。
近頃やっと、建築が分かるようになってきた。他の学問同様に、建築学も奥が深く、一朝一夕で身に付くものではない。教科書を読み、実際の経験を踏まえて確かな智識(ちしき)になる。
私は、自身の為のみでは無く、社員の為に勉強する。率先垂範し背中を見せることが、何よりの教育だと考えている。
「私達は、建築業に従事しているが、人を育て人を残すことが仕事である」と私は、常々役員に言っている。
そして私は、医師の経験を踏まえて、医療の心と思想を経営に活(い)かしたい。
弊社では、週に1回全社員を集めICC(Intensive Construction Conference)と称した会議を行っている。
各代理人が、工程表や設計図書等を用いて現場の現況及び予定を報告する。そして、全員で問題点を解決し成功事例は共有する。それは、若い社員の教育の場となる。
また、週3回は、私と吉平専務が現場を回り教育と技術指導を行う。更に週2回は、喜納社長と玉城常務が現場に行く。
正しく人を守り心地よく美しい建築物を創ることは、当然である。その上に、私達には使命がある。
人を育てることは、牛の歩みの様に一足一足と進むが如く時間を要する。
私達は、人を育て人を残す者で在りたい。
財を残すは下
されど財なくんば
事業保ち難く
事業を残すは中
事業なくんば
人育ち難し
人を残すは上なり 新平
(東恩納厚、東恩納組代表取締役会長)