<南風>ソーシャルインパクトボンド


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 8月から10月にかけて琉球大学の「社会的インパクト投資基礎概論」という公開講座に参加した。そこで学んだ新しい社会課題解決の方法「ソーシャルインパクトボンド」のお話。

 「ソーシャルインパクトボンド」とは、簡単に言えば社会の課題を解決するために民間資金を活用する仕組みの一つで、成果に連動した成功報酬が払われるというのが特徴である。主な登場人物は4者、(1)課題を抱える行政(2)課題を解決する事業者(3)課題解決に必要となる活動資金を提供する投資者(4)その課題に直面しているサービス対象者である。

 その方法は、まず投資者の民間資金を活用して事業者が課題解決を図る、その後実績を評価し、成果に応じた事業費用と成功報酬が行政から投資者に支払われるというもの。もし期待された結果が出なければ、行政からの支払いはなく、そのリスクは資金提供者が負うことになる。ここが「投資」に分類される所以(ゆえん)である。

 今年から二つの自治体でヘルスケア分野の予防事業に導入され、重症化を防ぐことで将来的にかかるであろう行政コストの削減を目的に実施されているという。

 行政にとっては財政の抑制効果と事業の質の確保、さらにはリスク回避もできる。事業者にとっては外部資金を活用し、実績を積み上げられる。投資者は社会貢献をしながら、経済的な利益も確保できる。もちろんすべてがうまく機能すれば、である。

 まだまだ先進的な取り組みではあるが、日本で初の連続講座がここ沖縄で開催され、ソーシャルインパクトボンドの第一人者である講師もうちなーんちゅである。受講者は「認知症」「引きこもり」「キャリア教育」の三つの課題に3カ月間取り組んだ。沖縄初の「ソーシャルインパクトボンド」導入事業が生まれる日ももう間もなくかもしれない。
(山口将紀、浦添市てだこホール総務企画課チーフ)