<南風>中国・周城の藍染め


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 那覇から上海へ、さらに地方便に乗り換えて雲南省昆明へ向かう。その後は小型バスに揺られて大理まで数時間余の旅である。何度か休憩をするが、うんざりするほどの乗車時間である。しかし大理に着いたとき、腰や尻の痛さは吹っ飛んでしまった。古城の石畳道や両脇に連なる古風な土産物屋、さらに柳の並木と疎水の流れが疲れた気持ちを優しく癒やしてくれた。

 翌日に巡回した周城の藍染め工房の作業風景には胸の高鳴りを覚えた。かつて周城は藍染めで一時代を築いたと言われる。その面影は数メートルの高い土塀や白壁が連なっている様で偲(しの)ぶことが出来る。現在、わずかに残っている藍染め工房(扎染=チャーラン)を訪ねる。土塀や白壁が高々とそびえ立っているのは独自技法が世間に流布することを恐れていたのであろうか。

 周城の藍染めは絞り染めである。縦横1・5メートルほどの薄いビニール素材に文様を描き、その図柄部分を小刀で彫り落として型を作成する。これを白生地の上に載せて上から青花を刷り込むと模様の印付けが出来る。この文様部分を手括(くく)りして藍の絞り染めを行っている。生産手法は家族経営で行われ、このような工房が大小数件ほど残っている。

 驚いたことが三つある。一つは、染め上げた布は紐(ひも)に掛けて干したのもあれば地べたに広げて干したのもあった。二つは、藍植物の葉を急須に入れて接客用のお茶として出されたことである。風邪やインフルエンザの予防になり、昔から習慣化した飲み方だという。本県では全く見られない飲み方である。三つは、染場の容器に入った藍玉を見ると、本県と全く同じ製造法と思われるが、灰色っぽくてインジゴ量の少なさが気になった。製品は濃紺なのに藍玉は灰色っぽいのである。

 藍玉の製造法と染色法を直に見聞できなかったことが至極残念であった。
(小橋川順市、琉球藍製造技術保存会顧問)