<南風>台湾のオルタナティブ・スクール


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 久しぶりに台北へ行った。日本映画のインディーズと台湾映画ニューウェーブは交流が盛んで、私も縁があり、台湾ロケも、台湾のカメラマンと映画を撮ったこともある。

 台湾の学校が7時半に始まるのをご存知だろうか。義務教育の不登校は法律で禁じられ、見つかると警察に通報され、親は罰金、学校にもペナルティがあるという。そして高校まで義務教育だ。教育費は無償だけど、若者には逃げ場がない。

 違う選択肢が必要だと考えた大人たちがオルタナティブ・スクールを作った。今回の訪台の目的は、その一つ、台北メディアスクールを訪問することだ。

 古いお寺の裏の傾斜地に、ひしめくように小さな住居が重なっている。大陸から来た国民党の軍人たちが手作りで建てた家で、老朽化し取り壊すことになり、保存運動を経て芸術村となった。

 工房やアトリエ、ギャラリーがあちこちにあり、観光案内所まである。元の住民もまだ住んでいて、野菜を作ったり、池で鯉を育てている。歩いてみるとまるで迷路だ。その中に、今度は高校を作ったのである。

 迷路の中にいろんな形態の教室が点在し、隙間でダンスや体育をやったりしている。驚いた。馬鹿ばかしくて素敵だ。しかし教室はすべてIT化され、教師は若く優秀で、生徒たちは明るく屈託がなかった。

 このデタラメな学校の校長先生は、李遠(小野)という著名な脚本家で、穏やかな笑顔の、筋金入りの闘士だった。

 何であれ、理想を実現するためには粘り強く闘わねばならない。日本も台湾も一緒で、大切なのは楽観的であり続けることだ。教育と映画はそこが似ている。

 日本映画大学はこの学校と提携する。ちっぽけな我々に何ができるかわからないが、そこは映画人同士、楽観的なのである。
(天願大介 日本映画大学学長映画監督、脚本家)