<南風>ラオスの藍染め法


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今年のはじめ、ラオスの染織を訪ねる旅をした。かねて精緻な紋織を有する国とは知っていたが、直に製織作業を見たら紋綜絖(もんそうこう)の仕掛けに驚くばかりであった。筆者は本県織物が唯一多様な手織物と思い込んでいたが、「井の中の蛙(かわず)」であった。なぜ糸綜絖が極端に長くて2メートル余もあるのか、これまで不思議に思っていたが、この綜絖の長さで紋織の機能を生み出していることを知って知恵の創造力を感じた。

 藍染めの話に戻そう。まず、気になったことは藍壺が比較的小さな容器になっていることだった。インドネシアのスンバ島の藍染めも小さな壺が使われており、日本のような一石甕(いっこくがめ)は見当たらない。多分、藍染料の製造量と発酵法との関係かと思われる。いずれの地域でも木綿糸が主原料になっているのが特徴的である。

 藍染め方法で最もびっくりしたのはウドムサイのナンサイトン村での染め方だった。琉球藍と同じ藍草を石臼に入れて杵つきし、わずかな水を加えてとろみを作り、この中に綛糸を入れて更に杵(きね)つきを続けて染色したのである。その十数分後には綛糸(かせいと)がしっかり染まっていたから不思議であった。本県の藍染め技法から考えると、全く異質な染色法である。しかし同綛糸は事前にグヮバの煮汁に浸け、更に田んぼで泥付けをしていたので、前処理の効果も加味されたことになる。

 本県には藍草の生葉染め技法はあるが、それは水を介しての染色法であり、藍草を直接的に用いる染色法ではない。理屈としては藍草中のインジカンが水溶性のインドキシルになり、やがて杵つきを経てインジゴになったことになる。

 国境を挟んだ国々、ベトナム、中国雲南省、ラオスなどの藍植物は、琉球藍と同じキツネノマゴ科植物である。本県の琉球藍は、雲南省から伝来したと文献には記されている。
(小橋川順市、琉球藍製造技術保存会顧問)