<南風>ロンシャンの礼拝堂


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 風冷えて、ひかげた庭の、隅踏むと、我の代わりに、泣く霜ばしら。

 中学の頃、埼玉県の叔父の家に寄宿していた。家が恋しくて、毎夜枕を濡らした。人間到る処(ところ)青山有りとは成らなかったが、掛替えのない時を過ごした。

 さておき、近代建築の巨匠のひとりに Le Corbusierがいる。彼の作品は、世界7カ国17作品が世界遺産に登録されている。また、近代建築の五原則を提唱したことで知られる。

 フランスのロンシャン地方に、中世に建てられた礼拝堂が存在していた。それは、第2次世界大戦でナチスドイツの爆撃により失われた。請われて彼は、5年の歳月を要し、新たな礼拝堂を創った。

 同じく私達も、平和を希求する建築家である。

 我が社は、辺野古の基地建設に決して参入しない。

 私達は、子供達に何を残すのか。それは誇れることなのかに仕事の基準を置く。

  ロンシャンの礼拝堂

 愛する人と暮らし

 ただ平穏を

 神に祈ったこの地で

 大きな争いがあった

 あまたの命が奪われ

 夢や希望

 小さな幸せさえも

 失われた礼拝堂

 私達も

 基地のある島に生まれて

 先人の魂の囁(ささや)きを聞く

 子供達に何を残すのか

 平和か戦争か

 命の重さ

 平和の尊さ

 それがすべて

 茶色の大きな屋根と

 白く厚い壁の

 この礼拝堂を

 コルビジェは何を想(おも)い

 創ったのだろう

 私達も

 平和を創る建築家で

 在りたい

Atsushi Higashionna

 戦争は

 問題解決の

 最後の手段ではなく

 最後の間違いだ

Heinz Fischer

(東恩納厚、東恩納組代表取締役会長)