<南風>琉球藍が足りない


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 本県には含藍植物が3種類あり、いずれも各産地染織物の染色材料として使用されている。最も多く利用されている植物はキツネノマゴ科のリュウキュウアイで、藍玉づくりは本部町伊豆味が中心である。

 二つ目はマメ科のインドアイで、竹富町小浜島が有名である。重要無形民俗文化財・結願祭と関連し、祭りの参加者全員が藍染め着物を着ることで知られる。そこでは植物の栽培から藍玉づくり、発酵染色まで一貫して行われている。最近は石垣島、宮古島、更に本島でもインドアイの栽培から藍玉づくりまで行われている。その要因は本部町の藍玉づくりが県内需要を満たしていないことにある。

 琉球藍とインド藍はそれぞれ異なった特徴がある。前者は葉や茎に色素を含むが、台風や干ばつに弱いほか、年2回しか収穫できない。後者は葉のみに色素を含み、大きく伸びる茎や枝には含まれていない。しかし台風には比較的に強く株枯れがない。しかも年に数回の藍玉づくりができる。

 三つ目は、宮古島で古くから利用されているタデ科のタデアイである。宮古上布の主原料は琉球藍であるが、発酵染色液の色素補給として蓼藍(たであい)(ビキーアズ)は使用されている。

 かつて沖縄の染織物は藍染めが中心であった。絣(かすり)織物は琉球紺絣として知られている。昭和初期に本部町が琉球藍の産地として有名になったのも県産染織物のほとんどがクンジー(紺地)だったことによる。例えば、琉球舞踊の「花風」や「浜千鳥」などの衣装は紺絣であり、民謡の西武門節でも片袖は紺地、片袖は浅地と謡っている。復帰直後でも宮古上布や琉球絣はほとんど紺絣であった。

 今、本部町伊豆味の琉球藍製造は低迷しているが、今後、碗型の製藍施設を再興すれば多くの者が従事でき、昨今の数量不足は乗り越えることができよう。
(小橋川順市、琉球藍製造技術保存会顧問)