<南風>明日への栄養


社会
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 土に散り落ちた花は、明日への栄養になるのだろうか。清らかな花は誰に媚(こ)びることなく、風に吹かれながらお澄まし顔をしている。かと思えば、翌日には土に顔を埋め、目を閉じているかのように眠りにつく。サヨナラ。

 毎朝の日課の水やりは、私にとって夢と現実を繋(つな)ぐ大切な時間だ。変わらないようでいて、少しずつ変化する小さな植物たちは大きな生命力を感じさせてくれる。「生きてる」。そんな当たり前のことが当たり前じゃなく有り難い。風が寂しくも心地良かった。季節が変わる。明るい日差しの中でいくつもの唄を口ずさんでいた。CD「タミノウタ」発売記念ツアーの千秋楽を控えた私は、頭の中で描いたステージに立つ。故郷沖縄で唄う決意のようなものを感じ、強い鼓動と同時に深呼吸をした。

 世界と私を繋ぐもの。それは音楽だ。脈々と歌い継がれてきた音楽は、今を生きる人の息により色褪(あ)せることがない。私の場合、ルーツミュージックは沖縄民謡である。CDアルバム「タミノウタ」は、民謡を中心にシンプルなピアノアレンジで収録した。自分で言うのも何だが、心地良い作品ができたと自負している。

 良いものは全て取り入れる。そして伝統音楽は現代音楽となり自ら息をする。いろいろな旅をして見た景色を皆で共有したい。花が散り落ちるような辛(つら)い経験も、芸の肥やしになれば。そう思わなければやってられないほど辛いこともあった。けれど音楽はいつもそばにいてくれた。

 あなたの生活の一部にも音がありますように。温かな魂の込もった音が。私はあなたに出会いたい。12月24日、ミュージックタウン音市場でお会いしましょう。あなたの明日への栄養になるよう、心を込めて音と想(おも)いをお届けします。私からのクリスマスプレゼントです。
(上間綾乃、歌手)