<南風>クリスマスの大泥棒


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 42年前、それは何の前触れもなくやってきた。封書の差出人に「怪人21面相」とある。手紙を取り出すと破れた地図の一片がひらりと落ちた。「私は君たちのクリスマスプレゼントを盗んだ大泥棒、怪人21面相。地図の一部を持った子どもたちが、25日に君の家に集まる。プレゼントを取り戻せるチャンスはその時しかないゾ」

 私は動揺を抑え、この一大事を妹弟に説明した。4歳と6歳の彼らはあんぐりと口を開けながら話を聞いていたが、事の重大さが分かると、放り投げていた自分たちの手紙をわしづかみに、母の元へ飛んで行った。母は、驚いた表情でかわるがわる私たちを見て、ならばその大切な紙切れをなくさないようにと言った。

 クリスマスの日、紙切れを手に従妹(いとこ)や友達が次々に我が家にやってきた。15名ほどの子供探偵団の結成だ。まずは全員のピースをあわせて地図を完成する。そこには森、ガケ、滝、氷山の絵に「魔法の音の箱は正直者のみ開けられる」とか「猛獣の洞穴へ近づくな」などの言葉が添えられていた。ふと妹が「猛獣」と飼い犬を指さした。なんと檻(おり)に妹のプレゼントが下がっているではないか。

 それを機に私たちは、ガケは階段、滝は水道、氷山は冷蔵庫、魔法の音の箱はエレクトーンと謎を解き、各々のプレゼントを取り戻していった。最後に「声の箱に暗号を」の謎が残った。その地図片を持ってきた女の子が、すでにプレゼントで遊び始めた子どもを見ながら悲しそうにしていると、突然電話が鳴った。彼女は飛び上がり、地図にあった暗号を電話の相手に伝えると、なんと玄関に本物のサンタクロースが現れ、最後に最高のプレゼントをもらえたのだ。

 怪人21面相もさぞかし悔しかっただろう。聖なる夜の子供探偵団に解けない謎はないのだ。
(石原地江、有限会社アンテナ代表取締役)