<南風>私のバイブル


社会
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 今日もまた、オフィスの書棚から一冊の書を取り出し、何度も念入りに読み返している。業務に行き詰まった時や要請書を取りまとめる時、あるいは、疲れやストレスを感じた時にも手にする貴重な一冊である。当協会の宮城豊元専務理事が著した「沖縄の繁栄を夢見て~使命感に燃えた半世紀余~」は、私にとって、まさにバイブルであり座右の書である。

 同書は、数々の提言や論文などを中心にまとめた、言わば宮城専務の政策理論の精華である。労働、経済、社会分野にまで及ぶ大作で、随所に宮城専務の見識の高さが垣間見られる珠玉の論文集である。

 呉屋秀信、稲嶺惠一両会長時代には、労使協調路線の確立や政治に対する経済界の参画、島おこし運動の提唱とかりゆし塾の開設、厚生年金の格差是正から女性リーダー部会の設立など、常に時代に先駆けた活動を推進するとともに、その政策提言の中枢を担って来られた。「私の役割は、経営者のスポークスマンであり、参謀に他ならない」と言われたように、誰もが認める優れた政策プランナーであり、名だたる論客であった。西銘知事時代には、政策ブレーンとして、終始一貫経済問題の解決に取り組まれたが、琉球政府の要職を歴任されたこともあり、その政策立案においても手腕を振るわれた。

 「人間は、しょせん努力した分しか幸せになれない」「常に使命感を持って対処せよ」「志を高く、知性を磨くべし」が口癖だった。「この書は、君たち若い諸君に是非読んでもらいたい。僕からのメッセージだ」とも語った宮城専務。厳しさの中にも優しさを秘めていた。慧眼(けいがん)と慈眼に満ちたこの書に触れる度に、私は、協会活動の原点と不易の理念を見出すとともに、行間から滲(にじ)み出る宮城専務の尊い訓示に、今また、背筋をピンと伸ばし襟を正すのである。
(山城勝、県経営者協会常務理事)