<南風>来年の5月に


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 愛楽園で証言集をつくっていたときのことだ。明治生まれの真吉おじいに、話の文脈は忘れてしまったが、「みんな美しい、汚い(という感覚)はあるから、後遺症(がある人)は嫌われてもしょうがない」と言われたことがある。

 愛楽園開園直後に入所した真吉おじいは、愛楽園で沖縄戦を経験し、戦時中の壕掘りの傷痕など、重い後遺症を抱えていた人でもあった。私は一瞬つまったが、言葉を選びながら次のようなことを話した。外見で決めつける人もいるけど、そうではない人もたくさんいるのではないかと。真吉おじいのリアクションがどういうものだったのか、納得してもらえたのかはあまりよく覚えていない。

 外見の違いなどから向けられる好奇や嫌悪のまなざしを受けてきた人たちは、そのまなざしに敏感だ。まなざしの向けられ方やその相手のことも、見ていないようで見ている。

 外見の変形は医学的にはハンセン病の後遺症になる。ハンセン病を印づけるものとされてきた後遺症を、きちんと説明しながら、ハンセン病に対するイメージを変えていくこともまた大事なことだ。

 来年の5月19、20日に全国の回復者や支援者が一堂に会するハンセン病市民学会が那覇と名護で行われる。沖縄での開催は6年ぶりとなる。

 どういう集会にしたいのか準備するメンバーで考えているが、今この島で起きていることを抜きに、平和や人権を考えることはできないという点では共通しているように思う。

 この島の平和への希求とハンセン病回復者が人権を求め続けてきた取り組みの交差上から、何かを見出そうとする試行錯誤が始まっている。大会は、改めて平和や人権を問い直す機会となる。様々な形で応援、参加していただければと願っている。
(辻央、沖縄愛楽園交流会館学芸員)