<南風>苦境打開のために


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 本稿が最終稿。最後の締めくくりとして、藍染めの原材料不足を打開するための小規模藍玉づくりについてまとめておきたい。

 琉球藍製造は、重要無形文化財の選定保存技術に指定され、文化庁の支援施策が講じられている。現状は諸般の事情で県内染織物業界の需要を満たしていない。近々に需給関係が改善される見込みも期待できない。このため藍玉がないとモノづくり作業に支障をきたす染織業界のために、藍植物から色素を抽出する簡便な手法を紹介し、苦境打開の糸口としたい。

 まず、藍植物はリュウキュウアイでもいいし、ナンバンコマツナギでもよい。両者の良し悪しは前稿で述べた通り。前者は台風や日照りに弱いが、葉や茎に色素を含み単位重量当たりの収率が高い。後者は比較的に台風や干ばつに強いが、葉にしか色素は含まれていない。このため前者と比較して単位重量当たりの収率は低い。でも、台風の多い本県の気候条件を考慮すると、栽培が容易である。

 次に、藍植物からインジゴの抽出法である。まず、藍草を浸漬する容器として100リットルほどのポリ容器を準備し、これを使用する。琉球藍であれば刈り取ったままの藍草を用いる。あらかじめ容器に4分の1ほどの水を入れ、この中に藍草を詰め込む。最後に藍草が全体的に漬かるまで水を注入し、更にその上から藍草が浮き上がらないように重石を載せる。天気によって異なるが、3日ほどで藍草は発酵する。その後は藍草を取り除き、その残液に消石灰を加えて激しく撹拌(かくはん)する。しばらくするとインジゴが生成されて液の色が濃紺になる。翌日には上澄み液を廃棄して沈殿した藍玉を取り出す。収量はわずかなので、これを繰り返して一定量を確保する。

 ナンバンコマツナギは1昼夜浸漬し、同様な作業を繰り返す。

(小橋川順市、琉球藍製造技術保存会顧問)