<南風>二つの故郷


社会
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 私は那覇、二中前(現泉崎)で生まれたナーファンチュです。けれども、初めましてとお会いする方々は私のことをウチナーンチュと見てくれません。

 それは言葉がナイチャームニーのせいです。3歳から小学校卒業まで東京で暮らしました。ちょうど人が言葉を獲得する時期です。そしてその言葉の使い方は死ぬまで保持されます。

 純粋なウチナーンチュなのにそう見られないということが長い間私のコンプレックスでした。

 年を経る毎に人にどう見られるかということは気にならなくなってきましたが、それでもやはり島言葉をワンヌクトゥバとして語れる人たちが羨(うらや)ましいです。

 人生も60半ば過ぎ、数えれば県外で暮らした年月の方が生まれ故郷で暮らした年月より長くなりました。

 長野市に25年暮らし、息子達が24歳になって、子育ても終了した時点で、生まれ故郷の沖縄に帰ることに決めました。

 私の愛する故郷の海や山が削り取られていく苦しさ、悲しみを同胞の人々と共に分かち合い、良い方向に少しだけでも棹(さお)さす役目を果たしたいと思ったのです。

 私が出来ることは、皆が自由に意見を述べ、好きなことをやり、想(おも)いを共有するスペースを作ることだと思いつき、そんな場所を作りました。場所は、昔、私がやっていた絵本屋「夢空間」のあった一角、新ビルの3階です。名前は「ゆかるひ」。意味は沖縄の言葉で「良き日」です。2016年10月にオープンし、なんとか1年乗り越えたところです。

 もう一つの故郷、長野の自家農園で作っているリンゴやブルーベリー、桃でスイーツを作り、「おやき」などをお出ししています。男女共に長寿トップクラスの長野の食も体験していただけますよ。

 ぜひお越しください。マッチョーイビーンドウ!
(屋嘉道子、ブックカフェ&ホール「ゆかるひ」店主)