<南風>人生を変えた先生


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 小学生の時、印象に残る2人の先生との出会いがあった。2年の時の先生は私からやる気を奪い、6年の先生は自信を与えてくれた。

 2年の時の体育の授業中、突然先生が「いっこく君、前に出て足踏みをしなさい」。皆の前で脚を上げ下げした。先生は「いっこく君の足踏みは変ですね」。全員が「ホントだ、おかしい」「変だ変だ」と大笑い。どうやら脚を上げた時に、つま先が正面ではなく下向きになっていたらしい。皆の前で悪い見本として指摘されたのだ。それ以来人前で体を動かす事が恥ずかしくなり、学芸会のお遊戯は苦痛でしかなかった。

 運動は得意な方だったが、リズムのある動きが苦手で「自分はおかしいに違いない」と思い込み完全に自信を失っていた。誰にも体の動きを見られたくないという思いのまま時は流れた。

 そして6年の体育のマット運動。その日は前転。自分の順番が来て勢いよく前に回った。その時突然ピーッと笛が鳴り響いた!「いっこく君!」。担任の伊佐先生が私を呼んだ。「ああ、またか…」2年の時の悪夢がよみがえる。「また皆の前で恥をかくのか」…先生は「いっこく君の前転はキレイですね。もう一度やってみて」。もう一度やった。「皆さんもこんなふうにやって下さいね」。なんと、いい見本として褒めてくれたのだ。

 その日を境にやる気がでた。先生に褒められたいという一心から、漢字テストの勉強も頑張った。満点記録を更新しクラスで一番に。他の教科も良くなっていった。大人が子どもに対して発する言葉には威力がある。子どもは素直に受け止める。無論なんでもかんでも褒めちぎるのは好ましくないだろう。6年生の私にとっては絶妙なタイミングだった。人前に出る仕事の出発点になっている。

 伊佐先生の一言で人生が変わった。そう言っても過言ではない。
(いっこく堂、腹話術師)