<南風>心で動く仕事


社会
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 店を始めたばかりの頃は素人なりに、がむしゃらに頑張りました。チラシを1万枚ポスティング、開店初日はお客さんや知り合いが大勢来てくれました。正直「これはうまくいくな」と思いました。でも、そんな甘い商売ではなかったのです。

 野菜があるのも3日目まで。数人いた大規模農家は「ここに置いても売れないから」と1週間ほどで撤退してしまいました。他の農家もどんどん減り、常に野菜が不足状態、なぜかわかりませんでした。そうなるとお客さんも「野菜がないから」と来てくれません。

 農家も客も来ない日々、閑古鳥。焦ってまたポスティングの繰り返しでした。初日は400人だったお客さんも、1週間後には1日100人以下へ…。

 農家が来ないので、社長が毎朝早く卸市場に行き、野菜を仕入れました。当時は年中無休で、寝る間も惜しんで働きました。それでも農家、客は増えません。

 毎日「どうすればお客さんと農家さんが来てくれるんだろう」と悩んでいるとき、ある農家さんからこう言われました。「農家はお金で動かないよ、心で動くんだよ。毎日一人ずつ電話してお願いしてみなさい」。その言葉にハッとしました。心で動く仕事なんだ、と目からウロコでした。

 次の日から毎日農家さんに電話しました。すると、皆野菜をもって来てくれるようになりました。野菜が増えたことでお客さんが増え、その影響でさらに農家と客が来る、と店も少しずつ活気づいていきました。

 あの一言のおかげで、今日まで続けてこられました。そこから農家さんとハッピーモア市場の絆ができました。今でも毎日農家さんには電話をかけています。「○○さん元気? 野菜よく売れてるよー、明日も持ってきてねー、いつもありがとうねぇ」「こちらこそありがとう」。農家さんの声で日々癒やされています。

(多和田敬子、ハッピーモア市場 取締役)