<南風>お一人様と子ども


社会
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 エスカレーターを逆走して遊んでいる子供がいた。危険なので「危ないよ。ここは遊ぶところじゃないよ」と注意した。すると近くにいた親がキッと私をにらみ「おばさんに怒られるからやめなさい」。

 生放送を担当していた時、リスナーから子育ての悩みについてメールがあった。子供を持たない身ではあるが真剣に考えてコメントした。局に「子供がいない人に子育てのコメントをさせるな」とご意見をいただいた。

 成長し、社会人となった子を社会で受け入れる。途端に「イッパシの社会人に育ててね」と言われる。あ、子育てしたことない人は関わらないでじゃないのね?

 さて…困りました。私はどうしたらいいのでしょう?これは私と同じ立場の人間は割と経験することだろう。確かに私は出産子育ての経験はない。そういう人間は口を噤(つぐ)むべきだろうか。

 専門学校に関わるようになって10代と接する機会が増えた。専門技術はもちろん、礼儀作法まで触れることになる。高校卒業したからと言って一般常識が身についているわけじゃないですもんね。職業人の前に人を育てることになるわけだが、人材となるにはいかに大変かと痛感している。

 エスカレーター逆走児は私の子ではないので、どう育とうと直接私に責任はない。子育ての問題も当事者ではないので無理に考えなくてもいいのかもしれない。では本当に無関係、無関心でいいのだろうか。その子が社会に出た時に受け入れて一緒に社会を支えることになるのに。

 子供は世の宝と言われる。親御さんにとっては大切な我が子であると同時に、社会の子でもある。子育ては家庭の問題であるが、社会課題の一面もある。いろんな角度での関わりがあっていいのだろう。独身ものではあるが、仲間を育てると思って、節度ある小言ババアでもいいか、と思う。
(諸見里杉子、ナレーター・朗読者)