<南風>その先の勝利へ


社会
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 勝てる試合で勝つ。簡単なようで非常に難しい。勝てた試合で何度負けてきただろうか。先月、全国派遣がかかった代表決定戦で、5点差のリードを逆転され代表権を逃した。水球界には、全国高校総体、国民体育大会、全日本ジュニアU17水球競技選手権大会かしわざき潮風カップの3大大会がある。そのかしわざき杯で、何度も代表決定戦を落としてきた。今年こそはと挑戦したが、今年もあと一歩のところで敗れた。

 原因はさまざまだが、全ての責任は監督にある。試合で手を抜く選手はいない。全力を尽くした選手たちを前に、あの場面はああしておけばよかった、こうすべきだったと、いくつもの後悔が心を重くする。

 試合に負けて沖縄に帰る時は、期待して空港で待っている保護者にも合わせる顔がない。すぐにその場から立ち去りたいといつも思う。時間が経(た)って日常に戻っても、悔しさは増すばかりだ。負けたことが夢であってほしいと願うが、現実と向き合わなくてはならない。平常心を保ち、自分を奮い立たせるために、机に向かって練習メニューを見直す。応援してくれる方々からの励ましや助言を反芻(はんすう)し、自分の中で整理して再び挑戦したいのだが、容易ではない。

 監督も選手も、勝利を得た後はそれがずっと続くことを願う。勝利のために膨大な時間とエネルギーを費やす。勝てば勝つほどに、次も勝ちたいという思いは強くなる。結局、試合で得た傷は試合でしか治らない。最後に自分にスイッチを入れるのは、自分自身である。しかし、そんな時こそ指導者は思い出さなければならない。水球の楽しさや喜びを味わい、時にぶつかり時に励まし合いながら、一つの目標に向かって仲間と共に協力しあうことの素晴らしさを。そして、その先に勝利があるのだということを。
(永井敦、那覇西高校水球部監督)