<南風>夢へのとびら


社会
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 初めて訪れた外国は、学生時代に短期留学したカナダだ。客室乗務員を志望していた私は、留学という一つの「夢へのとびら」を開いた。カナダは自然も人の心も美しかった。バンクーバー国際空港に降り立った日のことは今でも鮮明に覚えている。迎えてくれたホストファミリーの温かい表情にどれだけ安堵(あんど)したことか。

 ある日、大学からホームステイ先への帰途、バスで居眠りをしてしまい大変困ったことがあった。バスのドライバーに住所を書いたメモを見せたが通じず、その様子を見ていたバスの乗客たちが助けてくれた。おかげで家の近くで降車できたが、あり得ないことに、乗客全員バスを降りて私を見送ってくれたのだ。ホスピタリティに感動することが多く、ホームシックどころか、そのままカナダに永住したいとさえ思った。

 それから20年後、今度は8歳の息子と1歳の娘を連れて一時期ハワイで生活した。当時小学2年生だった息子は全く英語が話せなかったが、現地の公立小学校に通わせた。先生やクラスメイトが親切に彼をサポートしてくれたおかげで、驚いたことに、半年もすると読み書きができるようになっていた。私はハワイ大学の語学プログラムに入り、子供たちと一緒に英語漬けの毎日を送った。

 様々な壁を乗り越え開いた2度目の「夢へのとびら」は、米国同時多発テロ後だったこともあり容易ではなかったが、現地で知り合った方々に助けられ、貴重な経験になった。違う世界を覗(のぞ)く機会をつくることで、人生の幅が広がることを学んだ。

 今、15歳の娘は3月の春休みを利用して語学留学をする。そして、我が家にはもうすぐインドネシアから留学生が短期のホームステイにやってくる。「夢へのとびら」を開く彼女たち。グローバル化が進む時代、世界がどんどん広がっていくことだろう。
(亀川智子、JTA客室乗務員JALJTAセールス法人G長)