<南風>山がんまり


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 珊瑚舎スコーレには「山がんまり」という校外施設があります。「がんまり」はウチナー口で“いたずら”のことです。千坪ほどの原野を借り、2005年から毎金曜日に作業をしています。子どもたちの環境はゲームやスマホなどバーチャルな世界が大きな要素を占める時代です。そんな中、仲間と共に体を動かし、自分の手でモノを作る体験を大切にしたいと考えました。

 沖縄は昔から水不足に悩み、天水を上手に利用しています。その知恵と技を学ぶ場が「山がんまり」です。電気、水道、ガスなし。以前よく見られたコンクリート製の円筒形のタンクに雨水を貯めて使います。炊事、トイレ、畑、作業に使うので蛇口を流しっぱなしにするなど論外。すぐ「おい!水」と声がかかります。お昼は作業グループが持ち回りで一汁一菜の食事を作り、今では薪(まき)でご飯を上手に炊けるようになっています。

 昨年は移築した赤瓦の古民家の周囲に石垣を作りました。生徒は当初、石を重ねていけばいいと簡単に考えていたようです。ところがかなりの難事でした。まず約70メートルの斜面を重さ15キロほどのグリ石を運び上げます。転がしたり、引きずったり、もっこスタイルだったり、各人の体力に応じた工夫が生まれます。

 積むのはさらに大変です。2メートル以上の高さに石を組むには、一つの石の三つ先の動かし方まで考えないと積めません。どの石をどの角度で据えるのか。1時間苦闘しても積めない時があります。とうとう「タケちゃん助けてー」と叫ぶことに。タケちゃんとは山がんまりの作業全般を教えてくれる方です。彼は「石と話をしなさい」と禅問答のようなことを言います。でも、彼がやるとピタリとはまります。かくして「今日も石と話ができなかった」と嘆くことになりますが、一発できちんと積めた時の彼らの笑顔はドヤ顔です。
(遠藤知子、珊瑚舎スコーレ スタッフ)