<南風>才能より大切なこと


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 1992年28歳の時、独学で腹話術を始めた。図書館で「誰にもできる腹話術」という本を借りて来た。本にはまず腹話術の歴史が記されていた。紀元前の古代エジプト、ヘブライ。司祭が腹話術を駆使して神のお告げを口を動かさずに言ったことが起源とされている。

 人形を取り入れて演じたのは、20世紀頭のアメリカのエドガー・バーゲンだ。江戸川のバーゲンではない。間違えやすいので気をつけるように(間違えないよ!)。その後1937年、澄川久氏によって日本に伝わった。腹で話すと書いて腹話術。語源となるラテン語でも意味は同じである。文字通り腹式発声である。

 腹式発声とは? 文字での説明は難しいが、イメージとしては声を喉にぶつけないように、真ん中から声を通す感覚に近いかもしれない。加えて腹話術は唇を動かしてはならない。しかし教えなくとも最初から出来る人はいる。そんな人には元々才能が備わっているのかもしれない。そういう人は成功できるのか? 必ずしもそうとは言えない。

 ここから先は腹話術に限らず、いわゆる成功の秘訣(ひけつ)について考えたい。あくまでも私独自の見解です、ご了承下さい。

 …まずはその仕事を好きなこと。「好きこそ物の上手なれ」。好きならそれでいいのか? いや下手の横好きという言葉もある。何よりも「強い覚悟が必要」だと思う。誰にも頼らずに自力で成し遂げようという強い意志。コネを使おうとか誰かに助けを求めようなどと考える人に覚悟があるとは言えない。何年かかろうが自分の力でやってやる! その覚悟が必要だ。矛盾するようだがそういう人はなぜか周りに助けられる。覚悟を持った人しかその恩恵は受けられない。努力し続ける人には助け舟がでる。その時はそれを感謝の気持ちで受け取ればいい。やはり一人では生きていけない。
(いっこく堂、腹話術師)