<南風>登り窯づくり


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 今回も校外施設「山がんまり」のことです。ここには、作業小屋、コティジと呼ぶ食事をする小屋、赤瓦の古民家など幾つかの建物があります。今取りかかっているのは焼き物用の登り窯です。ここの土壌は南部特有のクチャです。当初、井戸を掘ろうとしましたが、地下4メートル以下は硬いクチャに阻まれて掘削できず、雨水の利用を考えました。クチャは粘土質ですから、炊事用のカマドの土台もこの土を捏(こ)ねて作ってあります。シンメーナビもかけられる大きなものを入れて七つの竃口をもつ頑丈なカマドで、10年以上経(た)っても立派に機能しています。

 かつてはこの土を使って焼き物をしていたと聞きました。いつかそんなこともしてみたいと思っていたところ、先日思ってもみなかった話が持ち込まれました。近くの山で陶芸をしていた方が体力がなくなり登り窯を崩すので、耐火レンガを下さるというのです。願ってもない話です。みんなの頭には登り窯ではなく、ピザ窯が浮かんでいましたが。

 レンガや陶芸用の土を掘り出しに行き、山がんまりの一角に再建しようとしています。奥行き3メートルの小さな登り窯を二つ作ります。一つはレンガを下さったお爺さん用です。まずは屋根をかけるために斜面を削り、水平をとって杭(くい)を打つ。柱を建て、屋根を葺(ふ)く。こびりついたレンガの汚れを一つずつ鎌で削ってきれいにする。経験したことのない作業は早くは進みません。でもコツコツやること。ゆんたくやブランコで遊び過ぎてリーダーに怒られることもありますが、振り返ったら出来ていた、それまでコツコツです。

 霰(あられ)が降った日も息が白いとはしゃぎながらの作業。寒さにたまりかねてみんなたき火場に集合。ふと作業小屋を覗(のぞ)くと、一人の生徒が午前中使った道具を黙々と手入れしていました。彼はこの3月卒業です。
(遠藤知子、珊瑚舎スコーレ スタッフ)