<南風>原点は「夢空間」


社会
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 今から40年前、ゆかるひ(那覇市久茂地)と同じ場所に「夢空間」という絵本屋ができました。当時は3階建てのビルで、その1階の角、9坪しかない小さな子供の本の専門店でした。

 その頃は、隣近所に子供たちがたくさんいて、夢空間は、ワラビンチャーたちのたまり場でした。子供たちの多くは家が個人商店を営んでいましたので、両親は店の切り盛りに忙しく、親に構ってもらえないワラビンチャーたちが憩いの場所としていたのです。そのうち、子供クラブと称して、工作をしたり、公園に飛び出してスポーツ大会をしたりしました。

 時が経(た)つうち、大人の常連さんも増え、無農薬野菜を仲間で購入したり、農家の援農に行ったり、自由学校研究会を立ち上げて講演会やワークショップを企画したり、石垣島白保の海を守るお手伝いをしたり、白保の若者たちの芸能デビューを支援したりと、豊かなムーブメントが湧き上がりました。当時、共に喜び、悩み、頑張った仲間たちが、時を経て今、また「ゆかるひ」の核になってくれています。

 子どもの本に関わることとしては「語り」の講演会を企画し、その会が元になり、沖縄で子供たちへ物語を語る勉強会が発足しました。この会は、今も「おはなしの木の会」として学校や図書館で子供たちにお話を届ける活動をしています。

 家の事情で夢空間を閉め、その後、私は長野に嫁ぎ、長野でも語りの会が出来ました。長野のお話の会は「おはなし畑」といって、三十数校の小学校にお話を届ける会に成長し、今年20周年を迎えました。

 うれしいことに、その20周年記念事業として長野の「おはなし畑」の仲間がゆかるひホールに12名来館し「おはなしの木の会」との交流お話会を今月3、4日に行ったのです。お話をシャワーのように浴びた幸せな2日間でした。
(屋嘉道子、ブックカフェ&ホール「ゆかるひ」店主)