<南風>青天の霹靂


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 進学、就職、異動、転勤など、多くの人たちが新たな環境に一歩を踏み出す春。環境の変化は新たな自分と出会えるチャンスでもある。客室乗務員は毎日違うクルーと乗務し、後輩たちにとっては毎日上司が変わり、一便一便、違うお客さまとご一緒する緊張感ある職種。同じ環境、同じ出来事は起こらない一期一会の世界である。私はこの仕事を天職だと思っていた。

 ところが、4年前の春、突然、営業職との兼務発令を受けた。まさに青天の霹靂(へきれき)だった。客室乗務員も他部門に出て“人財”交流し、視野を広げるようにとのことで、時々乗務をしながらの二足の草鞋(わらじ)となった。

 接客やホスピタリティの話ならいくらでも話せる。しかし、営業経験は機内販売に携わっている程度。何より法人営業は桁違いの数字の世界。文字通りの畑違いに、まるで新入社員のように緊張していた。自分に何ができるかを自問する日々。しかし、その緊張はやがてワクワクに変わった。現場に出て企業訪問をするうち、お客さまの笑顔に接することが幸せになった。沖縄の好景気も追い風となり、おかげさまで営業成績は右肩上がり。営業の世界での経験がないのに、それなりの成果を出すことができているのは、運よく素晴らしい同僚に恵まれているからでもある。

 お客さまにお客さまを紹介していただいたりして、人脈もどんどん広がっていった。大学や専門学校での講師、企業でマナー講座や講演の機会もいただき、仕事の幅も広がっていった。しみじみ思う。人生はいろいろなことが起きるものだと。自分が全く希望も予想だにしていないところに導かれることが。

 「青天の霹靂」。それは自分が想像もしていなかった自分の能力を引き出し、素晴らしい出会いをプレゼントしてくれるものかもしれません。
(亀川智子、JTA客室乗務員JALJTAセールス法人G長)