<南風>三つの夢


社会
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 3月11日に「卒業を祝う会」が行われ、夜間中学生6人、高等部2人の8人が卒業しました。珊瑚舎スコーレの卒業は、証書を授与する形ではありません。卒業生と校長がそれぞれ用意してきた文章を読み上げます。一人ずつ「○○さんが珊瑚舎スコーレを今日、卒業することをみなさんと認め合うための辞」の交換を行い、会場の皆さんの拍手で卒業となります。

 これに先立って「後期学習発表会」があり、夜間中学の3年生8人は日本語の卒業課題「文章による自画像」を発表しました。これまでの人生や3年間通った学校生活について、各人の思いを綴(つづ)った文章です。中学の卒業証書をもらったものの、実際にはほとんど学校に通えなかった、人生の中でこの3年間が初めての学校生活だったと振り返る方もいます。

 まして義務教育未終了の2人にとってはすべてが初めてです。1944年の10・10空襲で学校は終わったという82歳の女性は杖(つえ)をつきながらの登校でした。再び学校に通える時が71年後に来るとは夢にも思わなかったと涙ながらに語ります。

 もう一人の方の自画像の題名は「三つの夢」でした。7歳で海人の年季奉公に出され、それ以後両親に会うことはなかったそうです。必死に努力して一人前の海人として13年間働き、年季が明けて自由になったものの読み書きは全くできません。その彼の「三つの夢」とは、人に使われるのではなく自営業をすること。結婚し家庭を持つこと。この二つは叶(かな)いました。最後に残った夢は学校に通うことです。75歳で入学し、3年間無欠席でした。自作を朗読する晴れ晴れとした表情には努力の末に夢を叶えた人の誇りがありました。

 卒業を祝う会の様子がテレビで放映された翌日、一人の男性が入学したいと訪ねてこられました。戦争孤児の方です。
(遠藤知子、珊瑚舎スコーレ スタッフ)