<南風>未来への懸け橋


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 平成7年から3年間、学長秘書として、卒業式と入学式の際、学長や部局長たちの入退場行進の先導役を務めた。ある年の卒業式。折りたたみ椅子に正座し、両手を合わせて入場の学長らに深くお辞儀をする一人のお婆(ばあ)さんがいた。今でも脳裏に焼き付いている。老婆の深謝に堪える大学になっているだろうか。琉球大学逍遥(しょうよう)歌を聞くたびに、思わず背筋が伸びてしまう。

 この3月、1700名余りの若者が琉大を卒業した。昭和26年度に初めての卒業生を送り出して以来、その数は8万人を超える。最近、卒業生の活躍がメディアに何度も取り上げられるようになっている。未来の「ノーベル賞候補」と世界から注目を集める女性の工学研究者や、県外からの修学旅行の高校生向けの事業を立ち上げた学生起業家などがそうだ。社会の様々な企業や自治体で活躍している多くの卒業生たちもいる。彼らの活躍は、在学生や琉大関係者の大きな励みになっている。

 私自身は、卒業した東京の私大同窓生との交流は希薄だ。半面、琉大卒の多くの先輩、同輩や後輩との交流が年々濃くなってきた。企業や自治体を初めて訪ねる際、彼らの笑顔に迎えられて心から安堵(あんど)することも。公私にわたって、様々な助言や協力を頂けるかけがえのない貴重な財産だ。ありがとうございます。

 昨年度、本学の就職者の約7割が民間企業に、約3割が教員・公務員として就職した。今年度は民間企業への就職者が増えるのではと思う。彼らは、地域と大学とのネットワークの鍵となる人材だ。留学経験や地域との協働活動の経験を持ったグローバル人材、高い専門知識を活(い)かして地域・産業活性化を担う人材、個性的な発想で新産業に挑戦する人材。卒業生を核としたネットワークが、未来への懸け橋になることを心から願っている。
(新田早苗、琉球大学総合企画戦略部長)