<南風>オバァとハンシィ


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 今年も清明祭の季節がやってきました。

 長野の友人たちに、清明祭には一族がお墓に集まってご先祖様たちと一緒にピクニックをするんだという話をすると、みんなビックリ仰天! その後必ず沖縄の人たちは、本当にご先祖を大事にするんだねと感心されます。

 我が家のご先祖様も大勢おりますが、いつも話題となるのは父の母親、ハンシィです。お祖母様という感じでしょうか、オバァと軽々しく言えないほど威厳のある女性で伝説的な女傑です。いつもキセルを吸いながら、家の中心にどっしり構えて采配をふるい、財を成したという話です。

 店の定休日以外の日は、私が毎日の仏壇仕事(お茶とお水とお花の水を取り換え、三本ウコールで今日の平安を祈る)をしていますが、ついでに自分のお茶も入れてしばしハンシィとお話をしたりします。

 ハンシィは、父方のご先祖ですが、戦中戦後の混乱の中で体調を崩し亡くなられたとのことです。

 一方、母方のご先祖のオバァ(私の祖母)は長命で、カジマヤーもオープンカーに乗って為又の村中をまわり、祝福を受けた誰からも愛されるオバァです。私も大好きで度々オバァの家に泊まりに行きました。

 ハワイの花嫁としてハワイで暮らしていたオバァの作るアンダギーは、バターを使ったとびきり美味(おい)しいアンダギーでした。

 一族ばかりか地域からもその闊達(かったつ)さとユーモアのある人柄が愛されていたオバァは、アメリカにいるオバァの長男が、お墓のお骨も仏壇もそっくりアメリカに持って行ってしまったきり音信不通になっています。

 自分が生まれ育った土地から離されて、オバァの魂はさまよってはいないか、清明祭も寂しがってはいないかとシーミーやお盆が来るたびに気にかかるのです。
(屋嘉道子、ブックカフェ&ホール「ゆかるひ」店主)