<南風>首里は緑の夢を見る


社会
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 ある日、両親の話し声で目が覚めた。どうやら縁側で話しているらしい。

 「木ヌ葉ヌグトゥヤサ」と父。「ミジラサヨー」と母はなにやら関心している。「カメラで撮った方がいいんじゃないか」「杉子ならわかるはずよ」。ここにきてようやく寝ぼけまなこをこすりながら出ていった。

 「コノハチョウじゃん!」両親が騒いでいたのは、網戸に留まっているコノハチョウだったのだ。準絶滅危惧種でなかなかお目にかかることはできない。どう見ても枯れ葉がくっついているようにしか見えず、大人3人で観察会となった。

 チョウの飛ぶ緑豊かな首里を取り戻そうと地道な活動を続けている首里城下にチョウを飛ばそう会によると、戦前の首里ではコノハチョウが優雅に飛び回っていたという。眉唾と思っていのだが、まさか自宅の庭で確認することになろうとは。

 最近首里で注目を集めているのはミツバチ。花から花へ元気に飛び回っているのを見ると、頑張れーと心の中で応援している。

 現在、首里まちづくり研究会が中心となり、首里ミツバチ・花いっぱいプロジェクトを展開中。環境を守りつつ、地域の活性化、特産品の創出に繋(つな)げようというもの。ミツバチは汚染されていない環境でしか生きられないそうで、環境指標生物とされている。首里のミツバチたちが集めた蜜が首里王朝蜂蜜という商品になった。口の中でふわっと花の香りが広がる蜂蜜を、焼きたてトーストにたっぷりかける幸せ! この蜂蜜を使った加工品も生まれ始めている。地域ぐるみの活動が認められ、地域再生大賞の優秀賞を受賞した。

 民芸運動を展開した美術家の柳宗悦は、首里を訪れた際に生きた庭園都市と称したそうな。戦前の首里はそれほど緑に溢(あふ)れていたのか。往時を夢見て…今日もせっせと蜜源植物を育てるのだ。
(諸見里杉子、ナレーター・朗読者)