<南風>「沖縄」という枕詞


社会
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 北海道物産展は関東から西の日本では圧倒的な人気だ。確かに北海道には美味(おい)しいものが多いが、日本人は「北海道」と枕詞(まくらことば)が付くだけで美味しそうに感じてしまう暗示があるようだ。

 いろいろな企業が「北海道○○」のような商品を発売しているが、北海道産の何が使われての枕詞か、よくわからないものが多い。

 同じように「京風」という枕詞がある。京都産でもなく、京都の!でもなく、京風だ。京風ラーメンという名で、さっぱりしたラーメンが売られているが、実際の京都のラーメンは日本一こってりしている。

 「沖縄」も全国に大人気の枕詞だ。北海道○○や京風と違うのは、沖縄が付く場合、かなり沖縄産のものが入っている。

 沖縄産は食べ物だけでなく、音楽も観光資源として重要だ。民謡をはじめ、沖縄のポップスが流行したことで、それを耳にした全国の人が沖縄に旅行したくなるのだろう。

 そして、その流行した沖縄ポップスのほとんどが、明るい歌詞ではない。

 ここがポイントだ。青い空、青い海…と歌うだけじゃない、沖縄の人が乗り越えてきた数々の想(おも)いや、大切にしている守るべきことへの想いが歌になり、全国に広がっている。

 多くの沖縄産のヒット曲のほとんどが、悲しみや切なさを昇華させた歌である。沖縄音楽からイメージを膨らませて旅行に来た観光客は、沖縄に優しい観光客として滞在してくださる。

 観光客が海外のビーチリゾートよりも沖縄旅行を選ぶ気持ちの中には、きっと同じ日本人として、沖縄の歴史や想いを感じたい部分があるように思う。

 沖縄音楽のヒット曲は、全国に沖縄の心を伝えている。観光客が出合う風景には、沖縄の音楽がフィルターの役目となることで、より美しく輝いた景色に見えるのだろう。
(江川ゲンタ 宮古島大使 打楽器奏者)