<南風>考えることをやめない


社会
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 18年前、魂魄の塔に出かけました。幾筋もの線香の煙、捧(ささ)げられたお重、花、水。塔に額(ぬか)ずく人々の姿。この日の強い印象が夜間中学校を始めるきっかけのひとつになりました。

 6月23日は特別授業の日にしています。戦地のフィールドワークや、夜間中学の生徒の体験談を聞く場などを催してきました。

 昨年は読谷村の戦跡を昼・夜の生徒たちで回りました。昼の生徒たちがガイドをしました。体験者である夜間の生徒が話しました。「4月に野嵩で捕虜になった。村にアメリカ帰りのおじぃがいて、あんなに大きな国が女子どもを無闇(むやみ)に殺すはずがない。白い布を掲げてみんなで行こうと呼びかけたんです。だから私らは捕虜にさせられたんではなく、捕虜になったんです。チビチリガマに行き、あのおじぃのような人がいたらよーと胸(ちむ)ぐりさんやー。若い子たちに案内してもらい良かったです。沖縄戦全体のことが分かったよ」

 ガイドをした生徒の感想は「今まで僕にとって慰霊の日は当たり前のように来て、通り過ぎていく時間だった。6月23日に涙を流しながら必死に当時のことを話してくれるおばあちゃんをただ見ていた。痛みを知ろうともしなかった。僕は戦争を体験したわけじゃないから、そんな言い訳をしていた気がする。でも今年は違った。ガイドをすることで、自分が沖縄で生まれ育ったこと、沖縄県民であることを改めて考えた。伝えていくことが義務うんぬんじゃなくて、感じる考えることをやめない、それが歩みをやめないことなのだ。痛みを知ることも学びなんだ。沖縄を取り巻く環境に揺さぶられないためにも今感じ考えることをやめちゃいけない、そう思った」。

 若い人たちが当事者意識を持って沖縄戦をどのように継承していくのか。学校だからできることはなにか、考え続けています。

(遠藤知子、珊瑚舎スコーレスタッフ)