<南風>心の旅はつづく


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 お前は一体どこに向かってるんだ。声の仕事は辞めるのかと最近よく聞かれる。ここ数年、文字で伝える事に取り組んでいるから。いえいえ。別にこれまでと違う所に向かってるわけではありません。声の仕事も辞めるつもりはありません。情報を伝える形が違うだけです。

 文字で伝えるを意識したのは、両親の戦争体験を残さなくてはというのがきっかけだ。ここで頑張らなくては無くなってしまう。ずっと気持ちはあったが、どうしていいのか分からずに時間だけが過ぎた。この形かもと思ったのは、おきなわ文学賞の漫画部門漫画原作に応募した時だった。漫画という形なら戦争体験であっても若い人が受け取ってくれるかもしれない。パズルのピースがはまるようにパチっときた。そこから本格的に文字で伝えることへの挑戦が始まった。

 毎日使っているはずの言葉なのに、いざ気持ちや考えを伝えようとすると上手く使いこなせない。伝えたい事は確実に「これ!」とあるのだが、ぴったりくる言葉がなかなか出てこないのだ。いつもモヤモヤする。パッと変換できる人はすごいと、心から思う。

 試行錯誤の中で、言葉を探す旅は自分の内側を見つめる事と今更ながら気がついた。私が見聞きした、理解した事を外に出す行為なのだから。同時に内面も試され、晒(さら)される。「南風」執筆のお話を頂いた時は一瞬怯(ひる)んだが、改めて腹を括(くく)った。私の役割は情報を発信したい人と受け取る人の橋渡し。まだまだ勉強不足のへなちょこだが役割と目標は達成したい。

 「南風」は毎回ドキドキした。素晴らしい執筆陣に囲まれて…というのもあるが、予想外に反応が大きかったから。毎回丁寧な感想をくれる先輩。共感したと同級生。返ってきた声は人生2度目のビッグチャレンジへの勇気、原動力となる。感謝感謝です。
(諸見里杉子、ナレーター・朗読者)