<南風>過去を許し未来を変える


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 「未来は変えられる!」という言葉をよく耳にします。高度成長期に生まれ育った私は、人類が成し遂げてきた進歩を目の当たりに実感できた世代です。子供のころの未来とは、ズバリ!便利な道具を指しました。今では当たり前なスマートフォンは、当時、漫画で描かれていた通信機よりすごい道具なはずです。

 はてさて、現在における未来とは何なのでしょうか? その未来は本当に幸せにつながるものでしょうか?

 未来は変えられる…の前には「過去は変えることはできないけれど」という言葉がよく添えられます。

 本当でしょうか?

 過去という事実は変えられなくとも、その事実をどう受け止めるか?で過去の意味は変わっていきます。つらかったこと、悲しかったことを、さらに悲劇的な出来事に脚色もできます。

 過去を許し、許せるようになった自分に出会えた喜びを実感できるのも、自分の心次第なのでしょう。過去を自分の都合のいい解釈に書き換えていないか、常に自問自答しています。

 なんでもかんでも許せるわけではありませんが、つらい過去があったからこそ強く優しくなった自分を確認できたなら、きっと許すことができている証なのでしょう。

 昔より現代は、許さないムードが社会全体に漂っていませんか? まずは自分の小さなことを少しずつ許して、過去のわだかまりを変えていくことが、未来を豊かに変えることのように思うのです。

 許さない!と言うのは簡単です。どうしたら少しでも許せるようになるのだろうかと問い掛け合う社会になればいいな、というメッセージを私は音楽で表現していこうと思っています。

 だからと言って簡単に変えたらいけない過去もあります。戦争のない平和な世界を願うことが、私の一番の未来への想いです。
(江川ゲンタ、宮古島大使 打楽器奏者)