<南風>ボクシングとの出会い


社会
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 私がボクシングと出会ったのは、十年前に遡(さかのぼ)ります。格闘技は好きでしたが、本格的にやろうと思ったことはありませんでした。

 母が近所の方に言われた「娘さん太ったんじゃない」という一言がきっかけでした。「そんなに太っていないのに」と思いながらも、ダイエットを開始しました。

 ところが走り込みを始めて早々に膝を痛めてしまいました。高校の部活でサッカーをしていたので体力には自信がありましたが、膝を痛めるくらい太ってしまったことにものすごくショックを受けました。そんな時にふっと思い出したのです。「通っていた高校のすぐ近くに平仲ボクシングスクールジムがあるじゃん」。

 膝は痛いまま、ボクシングジムに向かいましたが、ジムまで来たものの入るのが怖くなって家に帰ってしまいました。2日間くらい考えて、「痩せたい」という思いでジムの門をたたきました。

 ジムは入会の前に体験練習ができるので、自分も体験練習を受けました。過酷で膝の痛みなんかよりも筋肉痛がすごく「続けられるかな。毎日通えるかな」と不安になったのを覚えています。元来負けず嫌いな性格のため入会に当たって「必ず毎日ジムに行く」ことを目標に決めました。

 ジムに通ううちにボクシングに夢中になっていきました。構え方や立ち方、ジャブ、ストレートと基本をマスターすると、もっと学びたい、うまくなりたいという欲が出てきて、その気持ちが膝の痛みや筋肉痛をも忘れさせてくれました。

 ダイエットで始めたボクシングでしたが、「痩せるため」から「うまくなりたい」という気持ちに変わりました。当時は、女子プロボクシングも認可されていない時代です。ダイエット=ボクシングジムという珍しい発想を抱いたことは、ボクシングの神様が導いてくれたのだと確信しています。
(平安山裕子、第5代OPBF東洋太平洋バンタム級女王)