<南風>違い乗り越え認め合う


社会
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 歌うのを躊躇(ちゅうちょ)した曲があります。言葉も鋭く、心の声を裸のまま吐き出した歌詞だったからです。インディーズ最後のワンマンライブで初披露した『MANUAL(マニュアル』。それまでは夢や希望、家族をテーマに歌っていた私が「スキンヘッドにしてやろうか?」と言ってしまうほど“怒り”や憤りをぶつけた曲でした。

 私は日本とアメリカのクオーターで生まれつき髪が茶色です。「素敵な色だね」「羨ましい」とよく言われるので私のチャームポイントだと思っています。高校生の時は「髪が茶色だから」と呼ばれ、地毛申請をし、毎月1回点検を受けました。そのたびに「悪いことをした気分だ」と苦痛で担任に「もう行きたくない」と訴えたこともありましたが「校則・ルールだから、ごめんね」と言われました。せめてもの抵抗で点検へ行かない月もありましたが、高校生は大事な時期。一つ一つの行動が評価や進路に繋(つな)がります。怒りや疑問を感じながらも地毛点検に行く自分が悔しくて歌にすることでしか消化できない感情がありました。

 大阪府立高校の女子生徒が生まれつき茶色の地毛を黒染めするよう強要され精神的苦痛を受けたとして、学校側を訴えたニュースをキッカケにメディアやSNSなどでは『#ブラック校則』とハッシュタグ付きで地毛申請をはじめとする理不尽な校則が話題になりました。

 私は『MANUAL』で叫び続けてきた気持ちを抱えた人たちがこんなにいるんだと知り、ライブで必ず歌うようにしています。

 今では、怒りではなく「ありのままの姿でいい」「ラブユアセルフ」がこの曲のメッセージだと思っています。国際的交流が当たり前になった今、さまざまな違いを乗り越え、受け入れ認め合うことから平和に繋がっていくと思います。

(Anly、シンガーソングライター)