<南風>「海外移住者子弟研修生」受け入れ再開


社会
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 那覇市の緑ヶ丘公園にかつて「子供博物館」、通称「ペルー館」があった。

 私がその存在を知ったのは1996年「立法院保存運動」に関わり、建築家の皆さんから、沖縄県内にある歴史的建造物のことを教えてもらった時だった。

 ペルーというのは南米のペルー共和国のことだが、沖縄との時差は14時間。10万人の日系人のうち7割が県系人だ。

 戦前、貧しかった沖縄から多くの人が移民した。南米ペルーへは1906年に初めて移民を送っている。

 県は、人口縮小や移民先からの送金を期待し、移民政策を推進。1929年には世界各地で暮らすウチナーンチュからの送金額が県の歳入総額の6割を超えたそうだ。

 その後、沖縄は戦場になり、たくさんの命が奪われ、島は焼け野原となった。その沖縄の復興を支えたのも世界のウチナーンチュだ。ペルーからは子どものための博物館建設の支援金も贈られ、1954年12月10日に開館式が行われた。

 この経緯は建築家の真喜志好一氏が「二つの建物が語りたかった物語…ペルー館と琉球政府立法院」(黒沢亜理子編『沖国大がアメリカに占領された日』青土社)の中で書いている。

 当時の子どもたちは、「ペルー館」で遊び、学び、どれだけの夢や希望を育んだのだろう。

 沖縄県は毎年、県出身の海外移住者子弟等の人材を留学生として招いている。また、いくつもの市町村が海外移住者子弟研修生受入事業を走らせてきた。

 西原町は1年間休止していた「海外移住者子弟研修生受入事業」を9月に再開する。先々週その第一号となる研修生決定というニュースがペルー西原町人会のフェイスブックで流れた。その記事を目にして、感謝の気持ちを忘れないように「ペルー館」のことを書いておきたいと思った。
(新川美千代、切り紙作家)