<南風>プロボクサーへの挑戦


社会
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 日本ボクシングコミッションに女子部門が創設されたのが2007年。初めてのプロテストが開催されたのが08年2月。10年前は、まだまだ日本における女子プロボクシングは始まったばかりで、プロテストを受けるのは他格闘技からの転向組やアマチュアボクシング経験者がほとんどだった。

 自分がボクシングを始めたのはダイエットが目的で、まさかそのような強者が集まるプロの世界に、本格的に取り組むことになるとは夢にも考えていなかった。

 そんな自分にスイッチが入った忘れられない出来事がある。それは、平仲ジム主催プロボクシング興行で、エキシビジョンスパーリングとして、初めてプロのリングに上がったことだ。

 当時、プロを目指していた女子練習生のスパーリングパートナーに抜擢されたのがことの始まり。自分はボクシングを始めて3カ月ではあったが、上手(うま)くなりたい一心で、何かに取りつかれたように毎日2時間以上のトレーニングと走り込みを行っていた。それに加え、負けず嫌いな性格から、練習でボコボコにされると「絶対に強くなってやる」という気持ちで立ち向かっていた。

 その成果か、プロのリングでスパーリングを披露するという機会を得た。練習とは違ってリングの上はとても緊張し、何をどう動いたのかあまり覚えていない。ただ鮮明に覚えているのは、スパーリングが終わったあとにレフリーに腕を上げられ、会場から大きな拍手をもらったこと。腕を高々と上げられた気持ちよさと、スパーリング後の達成感に何とも言えない感情が湧き上がった。これがプロボクサーへの挑戦にスイッチが入った瞬間だった。

 もう一度この快感を味わいたい。もう一度リングに上がりたい。この感情が今でも自分を突き動かしている。

(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)