<南風>高校野球は島んちゅの宝


社会
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 第100回全国高等学校野球選手権記念大会の沖縄県代表が興南高校に決まった。例年であれば、日本で一番早く決まるはずであったが、今年は台風の影響で順延となった。

 「この人持ってますね」という言葉がある。我喜屋優監督は50回記念大会の時、キャプテンで4番打者として、母校を甲子園に導き興南旋風を巻き起こした。それから50年後、今回は監督としてチームを100回大会に導いた。

 9年前のことだ。興南の春夏連覇の前年、息子は大分の明豊高校で、今宮健太選手(現・ソフトバンク)と二遊間を守り甲子園を目指していた。当時、こんなショート見たことないと思うほど、抜群の身体能力の持ち主だった。その年、大分県代表として、甲子園に出場するという夢が現実となった。その喜びもつかの間、初戦の相手が興南に決まった。

 沖縄県民は、全国でも地元の代表チームを応援することが日本一と言われる。その年の沖縄代表は興南。それが息子のいる明豊と対戦することになった。

 あの時を思い出すと、今でも胸の動悸(どうき)が高まる。周りからは「沖縄代表を応援するよ。だけど息子の打席の時だけは、応援してあげるさ」と、優しい言葉をもらった。しかし、勝利の女神は息子のいる明豊にほほえんだ。複雑な思いをしたが、その翌年、興南は春夏連覇の偉業を達成した。

 今年の夏も一段と熱くなりそうだ。車の通行が途絶え、市場の人々がテレビの前で指笛を鳴らし、カチャーシーを踊る光景が目に浮かんで来る。沖縄県民にとって高校野球は、郷土の誇りだ。県民の代表として、正々堂々、全力プレーで躍動する姿に、沖縄中が一つになり盛り上がる。子どもから大人までも勇気と感動をもらう。そんな高校野球はいつの時代も島人ぬ宝だ。そうあり続けてほしい。
(砂川正美、夢サポーター)