<南風>3回負けたら5回勝つ


社会
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 プロボクサーになるためには、日本ボクシングコミッションが実施するプロテストに合格することが必要で、筆記テストでボクシングの基礎知識、スパーリング2ラウンドで実技レベルをジャッジされる。合格基準は、ボクシングの基礎がしっかりと身についているか、スタミナが十分にあるか、安全性に問題がないかなどである。私はボクシングを始めて10カ月でプロテストに合格することができた。しかし、当時は女子ボクサーが少なく、多くは軽量級であったため、中量級の私がプロデビューするまでは2年を要した。

 2010年2月のプロデビュー戦は判定負けだった。そこから、同年5月引き分け、翌年4月、7月も判定負け。勝ったと思った試合もあった。悔しい思いもたくさんした。私のプロボクサーとしてのスタートは、まさに「いばらの道」であった。敵地では圧倒的な差をつけなければ勝てないことを、身をもって知った時期だ。

 OPBFタイトルを獲得した後、さまざまな人から「この時期にボクシングをやめようとは思いませんでしたか」という質問を受ける。私の答えは「やめようと思ったことは一度もない」である。当時の通算戦績は4戦0勝3敗1分。確かに見栄えは悪い。しかし、常に心に抱いていた思いは「3回負けたなら、そこから5回勝てばいい」「まだ自分に足りないものがある」「ここを乗り越えるためには、トレーニングしかない」ということ。

 自分のボクシングの良いイメージをして、他人にどう思われるかより、自分の思いを達成することを考えた。1勝への執念は人一倍あった。自分自身の生活も、全てにおいてボクシングを最優先するようになった。この時期の経験と勝つことをあきらめない決意がその後のボクシング人生の基盤となった。

(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)