<南風>驚きと発見の島めぐり


社会
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 集落を取り囲むフクギの木々と紺碧の海。多良間島には「日本で最も美しい村」連合の一員にふさわしい景観が広がっています。一方で、村落を一カ所に集めて防風林で囲む独特の光景は台風から島を守るための先人の知恵とも聞きました。海岸には過去の大津波で打ち上げられたとされる津波石も点在し、島の歴史が自然との闘いであったことをうかがわせます。多良間村を訪れたのは2回目でしたが、離島は何度行っても驚きと発見の連続です。

 昨年着任時、まず目標にしたのが県内41市町村すべてを回ること。ただ通常業務の合間を縫っての離島訪問は、天候をにらみながらの綱渡りの作業でした。粟国行きは空路の再開と同時に決行。伊是名島から伊平屋島へは乗客1人だけの渡し船で移動。すべてを訪れるのに半年かかりました。

 それでも自分の目で見た島の風景はさまざまなことを教えてくれました。中でも忘れられないのは、八重山諸島のある島を訪れた時、地元の有力者から聞いた話です。父親の転勤で県外から移り住んだ小学生の男の子が引きこもりがちになったらしいのですが、事態がよく飲み込めない島の子供たちが連日自宅を訪ね「学校においでよ」と声をかけ続けるうちに本人の気持ちが変化し、その後、元気に登校するようになったということでした。無垢(むく)で温かい離島の風土が自立支援の役割を果たしたとでも言えばいいのでしょうか。この話を聞いただけでも島に行ったかいがありました。

 赴任前にある先輩から「離島を知らないと本当の沖縄は分からない」と言われましたが、まさにその通りだと感じています。海で隔てられただけでこれだけ異なる文化や生活が育まれるとは。島の数だけ沖縄があるというのが実感です。次の目標は有人島の全島制覇。容易なことではありませんが。
(傍田賢治、NHK沖縄放送局局長)