<南風>一人一人が当事者意識を


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 公民館は民主主義の訓練場である。というと、意外に思われるだろうか。

 公民館の原点は敗戦にある。社会制度が変わり、焦土と化した状況の中、国民が平和を愛し、民主主義による新たな国づくり、地域づくりを進めるための機関として構想された。戦後すぐの1946年に出された文部次官通牒「公民館の設置運営について」では、公民館は「民主的な社会教育機関」「自治向上の社交機関」「郷土産業振興機関」「民主主義訓練の実習所」「文化交流の場所」「青年層の参加の場所」「郷土振興の基礎を作る場所」として7つの役割機能が示された。

 沖縄県は、戦後27年間米軍の統治下にあったことから、他府県とは公民館の設置状況が異なる。しかし、草の根的な住民自治の拠点として公民館はその役割を果たしてきた。

 8月8日、自己決定権と民主主義を強く求めた翁長知事の訃報により沖縄県全体が悲しみに包まれた。「うちなぁーんちゅ、うしぇーてー、ないびらんどー」と中央政府と対峙(たいじ)し、辺野古新基地建設阻止を訴え続け、高い支持率を得ていた。

 日々の暮らしと政治は地続きである。私たちの営みと密接に関わる事柄を政治の場で決定し、行政が執行していく。大仰に感じピンとこないという方も多いかもしれないが、地域の困りごとを住民が互いに話し合い、折り合いをつけて解決していく。その積み重ねが民主政治の実現へとつながるのではないだろうか。

 これからの時代は、一人のカリスマリーダーに頼るのではなく、市民一人一人が政策によって代表者を選び、それが実行されるかチェックし続けると同時に協働して取り組んでいかなければならない。私たち自身が当事者として主体的に関わっていくことが大事だ。 翁長知事のご冥福を祈りながら、民主主義について考えることにしよう。
(宮城潤、那覇市若狭公民館館長)