<南風>おもいは巡りめぐる


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 外国人留学生を応援するために生まれた日本語文学新人賞「留学生文学賞」の副賞の一つは「沖縄ツアー」だった。ツアーの主催は東アジアの歴史と文化を学ぶ「アジアを歩く石敢當」というグループだ。

 2006年受賞者の一人に、中国からの留学生〓麗芳(ジンリーファン)さんがいた。北海道大学に留学していた彼女は留学生文学賞に応募し、詩「独」で奨励賞を受賞した。そして07年4月に沖縄に来た。

 実は、彼女と私は12年前に彼女の故郷である河南省鄭州で出会っている。

 私は二度、徒歩で中国を旅した。一度目は1992年、福州から北京へ、進貢使路を歩いた。二度目は95年、上海から西安へ、「平成の遣唐使・踏査隊」として「遣唐使文庫」の調査を担当した。

 二つのルートが交差する淮安市の公共図書館の敷地内に琉球人の墓がある。埋葬されているのは、進貢使節の通訳の鄭文英で、1793年に、北京に行く途中で病死した。

 私は手を合わせながら、琉球人の墓を大切にしてくれている人たちにいつか恩返ししたい。この図書館に本を贈りたいと思った。

 「平成の遣唐使」のスポンサーにそのことを話すと実現に向けて調査することになり、その結果、18の学校や図書館に本を贈ることになった。日本語学科のある学校には日本語の本を、芸術学校には楽譜や画集などを届けた。

 その調査で訪問した学校の一つが、〓さんの母校である鄭州外国語学校だった。日本語を学んでいる中学生と2時間ほど交流した。その中に彼女がいたことを、沖縄ツアーのためのメールのやり取りをしていて気が付いた。驚きだった。

 あの時贈った本で勉強した子どもが、いま日本のどこかで留学生として学んでいるかもしれない。そんな想像をしてみた。
(新川美千代、切り紙作家)

※注:〓は革ヘンに「斤」