<南風>ボクサーと減量


社会
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 ボクシングには「減量」がつきもの。減量は、2週間ぐらいの短期間で一気に落とす選手、1週間に1キロペースで緩やかに落としていく選手など人それぞれである。「水抜き」の手法を取り入れている選手もいる。

 私はプロデビュー以来8年間、約5キロを1カ月程度かけて徐々に落とす方法を貫いている。夏場は1回のトレーニングで2キロ落ちることもあり、減量期とはいえ、エネルギー不足にならないようしっかり食べて減量をしている。

 食事内容は普段よりも豚肉を多く食べるようになり、腸内環境を整えるために発酵食品も意識している。減量中はとにかく喉が渇き、水をがぶがぶ飲みたくなる。しかし、水500ミリリットル飲むのと、スープを500ミリリットル飲むのとでは、体重はいずれも500グラム増加するが、カロリーがあるスープは再び体を動かすエネルギーとなる。水分摂取も減量中は注意が必要だ。

 周りの人から、減量するのは大変だから、日頃からその体重を維持しておけばいいのでは。パワーが落ちるのではと聞かれることがある。一般的に減量はパフォーマンスにマイナスのイメージがあるようだが、実は反対で、ボクサーのパフォーマンスに対してメリットがいくつかあるのだ。

 日頃のフィジカルトレーニングで体を鍛え、筋肉量を増やす。その後、減量期に入り脂肪を削り落とすことから、パワーを維持しスピードがアップする。私自身、試合の時は体が軽く感じるし、パワーが凝縮されたように感じる。この減量メリットを得るためにも、食べながら落とすことは、筋肉量を維持して脂肪をそぎ落とすために必要不可欠なのである。

 日々のロードワークや厳しいトレーニングと過酷な減量は自分との闘いでもあり、それを乗り越えることで、試合に向けて精神面が鍛えられていくのである。
(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)