<南風>泡盛、県外出荷の戦略は


社会
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 来年で幕を閉じる平成の時代。その前半と後半で明暗がくっきり分かれ、順調な上り坂から一転して下降の一途をたどっているものがあります。泡盛の出荷量です。沖縄に来ればいつでも飲めると楽しみにしていただけに、13年連続の出荷減というのは驚きでした。

 消費低迷の理由はさまざまのようですが、若者や観光客にも取っ付きやすいマイルドな味わいの商品が増えた結果、銘柄による違いが分かりにくくなったとも聞きます。私の力量不足なのでしょうが、飲み比べる楽しさは確かにワインや焼酎ほどではないように感じます(時々60度の花酒を飲んで翌朝、痛いほど違いを思い知らされることはありますが)。

 それでも個性を前面に出して勝負しようとする動きもあります。先日、南部のある酒造所を見学させていただいたのですが、マンゴーの酵母を使った芳醇な香りの古酒から日本酒かと思わせる飲み口の一品まで実に多彩。泡盛の見方が一変しました。杯を重ねて薄れゆく記憶の中でも「泡盛は必ず世界に通用する」という社長の言葉はしっかり焼き付いていました。

 すでに海外での人気を不動のものにしたのが日本酒です。国際的な宣伝戦の舞台でもあるニューヨークでは、新潟県が全国の都道府県で唯一アンテナショップを設け、県産の日本酒のPRに余念がありません。「一度でも実際に飲んでもらえば道が開ける」と地元の飲食店関係者を招いた試飲会も頻繁に開催しています。泡盛も負けてはいられません。

 来年の大阪G20やラグビーW杯、そして東京五輪と続く国際イベントの場で泡盛を提供しようという動きも進んでいるようです。何としても平成最後の年には反転攻勢の兆しを見せてほしい。今夜もささやかながら消費拡大に貢献することになりそうです。
(傍田賢治、NHK沖縄放送局局長)