<南風>客もてなす手間と工夫


社会
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 「ハラルフードのケータリングを引き受けてくれるホテルがあった」と夫が言った。豚肉が主流の沖縄では、国際的な会議や交流事業をする時にイスラム系のゲストに食事を用意するのは大変だ。ホテルの料理長は外国で仕事をした経験者だと後で知った。

 ハラルフードは、イスラム法の下で許された食べ物のこと。豚肉を食べることは禁止、他の食品でも加工方法や調理に関して約束事があり、それらが遵守された食品がハラルフードとして食されているという。

 私たち家族は、子どもが小学校4年生の時に英国で暮らした。学校は歩いて通える地元の小学校で、生徒の国籍は34の国と地域。まるでインターナショナルスクールのようだった。

 その学校の給食には、ハラルフードもあった。メニューもカリビアンフードとかメキシカンとか美味しそうな料理が並んでいた。1週間ほど前に注文をすれば温かい給食が用意される。

 今年のドイツからの客人の一人はベジタリアンで、毎日どこで何を食べるかをはじめに考えた。彼らが行きたい場所や観光地にベジタリアン料理を出す店があるかどうかで行き先が決まったりした。ネット時代だけあって、彼らはよく調べ上げていた。

 5月に切り紙作家として参加したドイツの日本映画祭。スタッフやゲスト用のケータリングはビーガン(厳格なベジタリアンフード)が基本で、肉が食べたい人用に肉の方が特別に用意されていた。

 翻って、鳴き声以外は全て料理すると言われるほど豚肉料理で有名な沖縄。しかし、イスラムの人やビーガンの人たちが食べられるメニューが少ない。全てを客人向けに変えることはない。例えば豚肉なしのゴーヤーと豆腐の組み合わせはビーガンになる。

 少しの手間と工夫があれば良いのかもしれない。
(新川美千代、切り紙作家)