<南風>勝利の一歩は走ることから


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 ボクサーはマラソン選手か、と思うほどよく「走る」。

 私は、早朝ロードワークでは最低5キロを毎日走っている。合宿時の走り込みは1日平均20キロに及ぶ。長距離を走ることから、階段・坂道のダッシュや砂浜での走り込みなども含む。ボクシングにおいて、「走る」トレーニングは基本中の基本であり、とても重要なものである。スタミナが強化されるのはもちろん、一番の技術的効果は足腰がしっかりして身体がブレなくなることだ。

 自分が納得いく走り込みができたときは、スパーリングにも自信が持て、結果的に試合前のメンタルが安定する。逆に、走り込み不足のときは、他のトレーニングを十分やっても不安が残る。

 私にとっては走ることはフィジカルも強くするが、精神面を鍛えることにも繋(つな)がっている。

 わたしは日頃のロードワークは早朝5時にスタートしている。夕方に比べて朝の空気は澄んでいて美味(おい)しく、早朝ウオーキングをしているおじいちゃんやおばあちゃんたちと「おはよう」と声を掛け合うことも日課となっている。朝の何気ない日常風景から元気と勇気をもらえて、一日の活力が芽生えてくる。

 また「走るために起きる」ことを自分に課すことは、試合に勝つための修行の一つだと思っている。ボクシングは相手に勝つ前に自分に勝たなければならない。

 早朝に起きて「走る」ことを毎日継続することは簡単ではない。常に自分に厳しくなければ続かない。自分の甘さに勝って初めて、リングで相手に挑める。

 だからこそ、ボクシングを観(み)ている皆さんに元気、勇気を与えられるのだと思う。

 私にとって「走る」ことは勝利への第一歩なのである。これからも立ち止まらず、自分の目標に向かって走り続けたい。
(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)