<南風>満員電車


社会
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 東京でラジオ局やライブハウスに向かうため電車で移動することが多々あります。通勤・帰宅ラッシュの時間と重なると覚悟を決め、戦いに行くような気持ちで駅へ向かいます。

 駅構内では人を避けながら歩き、やっとホームにたどり着いたかと思うと、ぬるい風と共に到着したのは完全にキャパオーバーの満員電車。ドアが開くと弾けたように人が出てきます。電車を待ってた人も同じくらい乗り込みます。私の背中にはギターがいるので一人半くらいスペースが必要です。周りはサラリーマンやOLがほとんど。毎日この通勤ラッシュと闘っているのかと思うと勇者に見えてきます。満員電車の中では、ギターを持っていると冷たい目で見られる時もありますが「あなたの毎日のこの苦労に比べたら大したことない」と思えました。

 私のツイッターにいろいろなコメントが来ますが「Anlyさんの音楽を聴くのが通勤の楽しみになっています」、「満員電車もAnlyさんのアルバムを聴いているとあっという間に時間が過ぎて行きます」というようなコメントを見ていると「あー自分の音楽が満員電車を乗り切るのに役に立っているんだ」と実感でき、また頑張って曲を作ろうという勇気が湧いてきます。

 どの仕事にも苦悩やストレスや役回りがあります。私は満員電車に毎日乗れるメンタルはないかもしれません。就職した友人が「あんなにたくさんの人前で歌えるってすごいね」とほめてくれますが、友人がこなしているような仕事内容を私はこなせません。

 自分ができないことを誰かがプロとしてやっているのです。みんな誰かのために毎日働いています。人間はいろいろな人々が支え合って生きているんだとガタンゴトン揺れる満員電車の中で他人に支えられながら感じました。
(Anly、シンガーソングライター)