<南風>食事と睡眠の関係


社会
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 睡眠不足は心身ともに悪影響が及ぶ。食事に関しても当然ながら同様のことが言える。栄養不足は体の病気だけではなく、睡眠障害や精神疾患などの増悪因子ともなる。「栄養精神医学」は栄養の観点から精神障害を予防・治療していく新しい領域の学問で2013年に国際栄養精神医学会が設立された。

 先日、日本栄養精神医学研究会会長の奥平智之先生とお話しする機会をいただいた。私の母が管理栄養士で幼少期から食事の重要性を教えられてきたため、奥平先生とは意見が一致する部分が多かった。奥平先生の著書「食べてうつぬけ」はアマゾンのメンタルヘルス部門で17年11月の売り上げ1位を記録している。

 奥平先生は女性に多い鉄不足が心身の不調の原因となることに着目し、鉄欠乏女子のことを「テケジョ」と略して注意喚起している。鉄不足は精神活動に必要なさまざまな脳内ホルモンの生成に悪影響を及ぼす。

 例えばセロトニンが不足するとイライラしやすくなったり、ノルアドレナリンが不足すると意欲が低下しやすくなる。私の専門である睡眠領域でも鉄動態が関与する重要なホルモンが多く、ドーパミンの機能不全では「むずむず脚症候群」や「過眠症」、メラトニンの機能不全では「不眠症」や「睡眠リズム障害」など生じる。

 食事と睡眠に関して他にも新しい取り組みが注目されてきている。睡眠リズムをつかさどる体内時計と食事の関連を研究する領域は「時間栄養学」と呼ばれている。ホルモンの分泌や栄養代謝に概日リズムがあることをふまえて、適切な栄養摂取を研究する分野だ。近年の研究では同じ栄養やカロリーを摂取しても、時間帯の違いで健康に差が出ることが明らかになってきた。昔から言われてきた「早寝早起き朝ごはん」という格言に科学的裏付けが伴ってきたといえよう。

(普天間国博、嬉野が丘サマリヤ人病院 睡眠専門医・医学博士)