<南風>笑顔と出会い続ける


社会
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 図書館長をしていた時、カウンターを楽しくしようと、色とりどりの切り紙の花を、花瓶に差した枯れ枝に飾った。

 その切り紙の花が欲しいと子どもたちがカウンターに並んだ。「世界に一つしかない花。みんなもそうだよ」と言いながら子どもたちにプレゼントした。

 子どもたちの笑顔をきっかけに、私は切り紙の本を読み、草花の観察をはじめた。私の切り紙の線は草花を真似したものが多い。

 ある日、ふと、千枚切ってみようと思った。お菓子の丸い空き缶に切り紙を重ねていった。上からのぞくと万華鏡のようにも曼荼羅(まんだら)のようにも見えた。どんどん楽しくなり、いつの間にかハサミを持つのが日課になっていた。

 3年前、切り貯めた作品を見た知り合いのアーティストから、「みんなに見てもらった方がいいですよ」と背中を押され、私は作品を見てもらうための活動を始めた。

 「切り紙」をその場で切るパフォーマンスを初めてやったのは、英国のナショナルギャラリー前広場。そして幼稚園や小学校などで続けてきた本の読み聞かせボランティアの中でも切り紙を紹介した。南城市の半島文化祭やうるま市のイチハナリ・アートプロジェクトにも参加。毎回、手探りで迷い立ち止まることもたくさんある。

 そんな時、私は呪文を唱える。「海の色はね、青、緑、紫でしょう、あと、赤もあるんだよ」と。

 それは辺野古の海を見ながら幼い私が母に言った言葉だ。最近、母が「赤もあるんだよ」という感性に感心したと励ましてくれた。だから、呪文は、自分を信じることを思い出させ、私を安心させてくれる。 

 沖縄の美しい海と幼い頃の言葉を忘れない限り、私は切り紙でこれからもみんなの笑顔と出会い続けることができる。

(新川美千代、切り紙作家)