<南風>チャンピオンベルト


社会
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 ボクシングの世界チャンピオンベルトを初めて見たのはプロボクサーになって間もない頃。平仲会長が1992年に獲得したWBA世界チャンピオンベルト。年季の入った黒いベルトケースを開けると、WBAの伝統を感じる特徴あるデザイン、黒革にゴールドの王冠をかたどった装飾が施された輝かしい世界チャンピオンベルトが入っていた。

 当時、その重厚な姿形に圧倒された。平仲会長に「ベルトを巻いてみるか」と聞かれた。私はベルトを巻くどころか、手に取ることも遠慮した。「自分もチャンピオンベルトがほしい。自分のチャンピオンベルトを巻きたい」という思いが沸き上がっていた。その後、他のボクサーのタイトルマッチなどでチャンピオンベルトを見る機会は幾度とあったが、私は常にベルトに触れることはなかった。自分のベルトを手に入れるまで。

 ついに、今年の春、自分のチャンピオンベルトを腰に巻くことができた。4月8日。OPBF東洋太平洋バンタム級王座を獲得したのだ。リング上で勝者コールされ、鮮やかなグリーンの革に東洋太平洋加盟国の国旗が施された繊細かつ豪華なOPBFチャンピオンベルトが自分の腰に巻かれたとき、恋焦がれたベルトを手にしたうれしさと達成感と、応援しサポートしてくれている方々に結果で恩返しできた安堵(あんど)感と、「チャンスメイク」してくれた会長やスタッフへの感謝と、ありとあらゆる感情の渦が巻き起こり、涙があふれた。

 初めて触れたベルトの感触、重み、輝きは鮮明な記憶として私に刻まれている。平仲会長が掛けてくれた言葉がある。「世界一になると、もっと輝かしい景色が見られるよ、それをつかみ取れるかは自分自身の信念だよ」と。プロになった以上、目指すのはただ一つ、世界チャンピオン。まだまだ夢の途中、必ず夢を現実にする。

(平安山裕子、OPBF東洋バンタム級女王)