<南風>地域を支えている力


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 台風が過ぎ去った週末の朝、被害状況を確認しようと出掛けると、私よりも早く来て、公民館周囲の植栽を手入れしている地域の人の姿があった。公民館は地域の顔、だから常にきれいにしていたいと、毎日の水やりや苗の植え替えなどを自発的に行っている方だ。

 他にも公民館は多くの方に支えられている。

 常に「何かあったら声掛けてね」と言って、イベント時の会場設営や片付けを手伝ってくださる方、野外活動の際、安全誘導を率先的に協力してくださる方、「荷物の運搬など必要な時にはいつでも使ってね」と業務用軽トラックの合鍵を預けてくださる方までいる。

 また、地域に目を向けてみると、通学路の清掃をしている方や歩道の植栽やプランターの世話をしてくださる方、登校時の交通安全立哨を毎日行っている方もいる。地域のために、将来を担う子どもたちのためにと、時間と労力を使うことをいとわずボランティア活動をしている人は多い。

 公民館に勤めて初めて、このような方々の存在を知ることができた。慌ただしく日常を過ごしているだけでは気付かないかもしれないが、地域の安全や環境美化は、縁の下の力持ちによって支えられている。

 そういえば学生の頃、足を怪我(けが)して松葉づえ生活を送ったことがある。すると急に車椅子や松葉づえの人が目に付くようになった。妻が妊娠した時もそうだ。世の中に妊婦さんがたくさんいることに気が付いた。

 同じ景色を見ているようでも、その人の状況や問題意識で受け取る情報は異なってくる。

 深呼吸をしてゆっくり周りを見渡してみると慣れきった日常が違ったものに見えるかもしれない。心にゆとりを持って想像力を働かせることができれば、世界はもっと豊かになるだろう。のど飴(あめ)をなめながら、そんなことを考えている。
(宮城潤、那覇市若狭公民館館長)