<南風>「島の記憶」


社会
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 2017年の「イチハナリアートプロジェクト+3」のテーマは「島の記憶」だった。

 幼い子どもを連れて、よく伊計島や浜比嘉島へ泳ぎに行った。透明度が高く、泳いでいる写真には水中で動かしている足までちゃんと写っている。

 私に提案された会場は、四つの島で一番背の高い宮城島、通称「タカハナリ」の宮城中学校だった。宮城中学校は2012年に四つの島の七つの学校が彩橋小中学校に統合されたため廃校になった。

 作品を準備する期間、私は、中学生に戻った気分で登校し、教室の窓を開け、掃き掃除をし、雑巾をかけ、切り紙の花を飾った。

 湿気に強い和紙でさえも2、3日経(た)つとなよってしまったので、毎日新しい作品と差し替えた。教室に花を飾る「お花当番」のことを思い出しながら、生花を扱うように手入れした。

 受付スタッフの一人が卒業生だったので、宮城中学時代の思い出話をいろいろ聞くことができた。

 2階の窓の下には腰掛けられるスペースがあり、よく見ると将棋盤が薄く掘られている。それは彫刻刀で同級生が掘ったもので、彼らはこれでよく遊んだという。将棋盤を掘った同級生も会場を訪れ昔話に花を咲かせていた。

 校庭は雑草が伸び放題になり、校舎は施錠され、普段はガラス越しにしか見ることができない教室が、アート展開催中は語り合いの場になっていることがとてもうれしかった。

 ワークショップには、子ども連れ、一人旅の人、島の長老も参加してくれた。

 アート展や、教室で切り紙遊びをしたことが新しい「島の記憶」になっていくのだろうか。

 今年、イチハナリアートプロジェクトは、作品展示を休み、アート展の今後を模索するためのフォーラム等を開催するという。
(新川美千代、切り紙作家)